萩で見つけた日本の美学 - サム・エイベルの5週間の記録2024.09.09
今から、7~8年前。
写真家サム・エイベル氏が萩の明倫学舎で写真展を行いました。
その際にある方からサムが書いた文章の一部を紹介されました。
以下文
1980年、私は日本の小さな町、萩で5週間を過ごしました。
目的は、この歴史的な町の風情を感じ取り、そして萩で最も有名な市民であり、
革命的な愛国者、そして優れた教師でもあった吉田松陰の物語を記録することでした。
しかし、滞在中、私は次第に日本そのものに強く惹かれていったのです。
たとえば、魚を仕分ける方法、金銭の数え方、そして日々の生活における物事の整理の仕方。
これらの何気ない日常の中に、日本人が長い歴史を通じて培ってきた独特のマナーがあり、
そのすべてに心を打たれました。
そこには計り知れない美学が自然に根付いており、その美しさが日本人の生活の隅々にまで
浸透していることに気づかされたのです。
私が滞在していたのは、小さな伝統ある宿「常茂恵旅館」※。
(※旧常茂恵)
この旅館は、まさにその美学を凝縮した場所でした。
古き良き日本を求めて毎朝萩の町に出かけましたが、実際にはその必要はありませんでした。
私が探していた日本は、すでに常茂恵の木造の塀の中に存在していたのです。
伝統的な佇まい、繊細でありながら実用的な設計、そして空間を満たす静けさ——
すべてが、私が思い描く「本質的な日本」の象徴だったのです。
以上
左:元萩市長 現至誠館大学長 野村 興兒
中:写真家 サム・エイベル
右:萩の宿 常茂恵 女将 厚東啓子
サム・エイベルの萩での5週間は、彼が探し求めていた「日本」を発見する旅であり、
その旅の終着点は、実は最初から彼の目の前にあったのかもしれません。
旧常茂恵旅館は、日本の歴史と文化を肌で感じられる、そんな特別な場所だったのです。
私たち「萩の宿 常茂恵」も、この旧常茂恵が培った価値と歴史を大切に受け継ぎ、
これからも訪れる方々に「本質的な日本」を感じていただける場所として成長していけるよう、努力してまいります。